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【インタビュー】進むべき道 音楽の導き 作曲家・キーボーディスト 秩父英里さん 

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 「人生いつ何が起きるか分からない」。たびたび耳にする表現だが、この人の言葉には実感がこもっている。本学卒業後バークリー音楽大学に留学し、現在は作曲家として活躍中の秩父英里さんだ。自ら「日本の教育システムから外れている」と語る今までの歩みを振り返ってもらった。 「仙台は街と自然が両方ある」と秩父さん=本人提供  県内の高校に通っていたので、東北大学は私にとって身近な大学でした。教育学部に進学しましたが、もともと高校では理系でした。数学や理科も嫌いではなかったし、おもしろいんじゃないかと思って。ひとまず理系に進みましたが、オープンキャンパスで工学部を見学したときに、当時の自分にはあまりピンときませんでした。おもしろいなと思ったのは、教育学部の教育心理学コース。実験や分析をするということを聞いて、人の心を扱うとはどういうことだろうと興味を持ちました。それがきっかけで、教育学部に決めました。教育学部では教育心理学コースの臨床心理学専攻に所属して、臨床心理学や家族療法、発達心理学などを学びました。 バークリー賞を受賞。「これは何かの合図」  当時は大学院に行って、その後は就職かなとぼんやり考えていました。臨床心理学に関わる仕事や研究者の道に興味がありました。  転機は4年生のときです。所属していたジャズ研の部室に、チラシが貼ってあるのを見つけました。春休みの期間に、アメリカのボストンにあるバークリー音楽大学の先生が日本に来て、北海道でワークショップを開催するという内容でした。バークリーの名前はジャズ研に入る前から「世界中からすごい人たちが集まって音楽が学べるすごい学校だ!」と思っていて、楽しそうだったので、そのワークショップに参加することにしました。大学院への進学が決まっていたので、大学4年分のごごほうびのつもりでした。  ワークショップの最終日には発表会があったのですが、そこで「バークリー賞」を受賞することになりました。それがすべての始まりです。今まで音楽をやってきて、でもこれ以上の環境を求めるのは難しいのかな、と思っているときの受賞だったので、これは何かの合図なのではないかという気持ちになりました。賞はバークリーのサマープログラムに無料で参加できるもので、ちょうど進路に悩んでいたこともあったせいか、なぜか大学院の入学式の日に教務課へ休学の方法を聞きに行っていまし

本学創立115周年、総合大学化100周年

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10月に記念式典開催予定  本学は今年、創立115周年・総合大学100周年を迎える。記念事業として、海外同窓会交流イベントや周年記念基金の設置のほか、10月1日、2日に東北大学創立115周年・総合大学100周年記念式典が行われる予定。本学出身者や地域住民からなる東北大学ネットワークの中で歩んできた115年の歴史を振り返り、未来に向けてのビジョンを示すことをコンセプトとしており、10月1日、2日には、ホームカミングデーや国際まつりといったイベントも併 せて実施する。  「東北大学は、地域と連携しながら社会に貢献してきた」と植木俊哉理事・副学長は話す。東北大学の前身となる東北帝国大学は東京帝国大学、京都帝国大学に続く第3の帝国大学として1907年に創立された。当時は、国の財政赤字のため、民間や宮城県からの支援を受けて設立が実現した。植木理事・副学長は、「日本は、東京などの首都圏を中心に発展してきた。大都会というわけではない仙台に大学が設立されたことには、日本の国土の均衡のとれた発展という点で大きな意義がある」と語る。「大学は人材育成や学問、科学を探究することで社会を変えていく原動力を生み出す組織。大学は単に勉強、研究をする場所ではなく、グローバルな地球規模の問題解決に貢献する責務を担っている」とコメントした。 学章の萩 ロゴマークに 115周年の文字と、東北大学の象徴である萩を組み合わせたデザイン。 職員の名詞、メールの署名、115周年関連事業のPRのために使われている。

男女共同参画 「門戸開放」に欠かせぬ理念

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DEI推進宣言 策定  本学は4月、「東北大学ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DEI)推進宣言」を策定し、多様性・公正性・包摂性をその理念として掲げた。  「門戸開放」という本学建学の理念は、ダイバーシティ推進を象徴している。理念遂行のため、女性教職員の積極的な採用と上位職への登用に加え、男性職員の育児休業等取得率の向上への取り組みや、無意識の思い込み、偏見を払拭する啓発活動を実施している。  本学の課題点の一つは、学生、教員ともに理工系分野で女性が占める割合が低いことだ。  このような課題に対し、本学の女子大学院生が中心となって活動している「東北大学サイエンス・アンバサダー」は、ブログでの発信や出張セミナーなどの活動を通じて、小中高生の身近なロールモデルとなり、女子学生の理系進学を促進しようと取り組んでいる 。  教員に関しては、女性で子どもがいる場合、研究時間が少なく、家事や育児、介護時間が多いことが令和2年度アンケート調査で分かっている。調査結果を踏まえ、各キャンパスでの保育園の設置、ベビーシッター利用料などの補助により、キャリアをつなぐことができる研究、職場環境の整備を行っている。  多様性と公正性を包摂する大学を目指して、本学は今後もキャンパス内外におけるDEIの推進に努めていく予定だ。 「らしさ」に縛られるな  「属性と結びついた無意識の思い込みや偏見にとらわれず、進路を考えてほしい」。本学男女共同参画推進センターの 米永一郎 ( よねながいちろう ) 特任教授は、共同参画の現状を踏まえ、こう訴える。 男女共同参画の視点から高校生の進路について語る米永教授  男女共同参画の目標は「男性」「女性」という属性によらず個性を発揮する機会が確保され、均等に利益と責任を享受する社会の実現だ。しかしその実現は道半ばにある。  進路選択の際にも「男性」「女性」の属性による無意識の思い込みがいまだに影響を与えていると米永教授は指摘する。その上で「文系は女性らしい、理工系は男性らしい」「女性は研究者に適さない」といったジェンダー・ステレオタイプに縛られずに、自分の夢を実現する進路に挑戦してほしいと語った。

【HP限定】本学の男女共同参画推進の歩み

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   本学が男女共同参画を推進するまでの経緯と、その展望について、本学男女共同参画推進センターに尋ねた。    「門戸開放」とダイバーシティ推進  本学は、 1907 年(明治 40 年)の創立当時から、専門学校、高等師範学校の卒業生にも広く門戸を開き、留学生も積極的に受け入れてきました。  1913 年には、正規の「大学」として当時認められていた 4 つの帝国大学のなかで初めて、女子学生の入学を認めました。これは当時としては画期的な「門戸開放」、今の言葉で言えば「ダイバーシティの推進」です。ダイバーシティの概念もなかった当時、政府からの圧力にも屈せず、本学は創立当初からの「門戸開放」の理念を貫いたと言えるでしょう。 推進に至る経緯  本学では 2001 年に男女共同参画委員会を設置し、 2002 年に男女共同参画に関する東北大学宣言を発出しました。その背景には、 1999 年「男女共同参画社会基本法」が制定され、男女共同参画社会の実現が「 21 世紀のわが国と社会の在り方を決定する最重要課題」とされたことがあります。  その後も男女共同参画を包括的に推進し、 2013 年には本学女子学生入学 100 周年記念シンポジウムで「男女共同参画推進のための行動指針」を発出しました。 2014 年には「男女共同参画推進センター」が開設され、男女共同参画委員会と連携協力のもと、本学の男女共同参画を推進するに至っています。 DEI推進宣言  本学は今年 4 月 5 日にDEI( Diversity Equity & Inclusion )推進宣言を発出しました。  これまでの取り組みにより、大学内のジェンダーギャップが多少改善されたとはいえ、女性が占める割合は世界的な観点からは依然として低く、男女比 1 対 1 のジェンダー・パリティの達成はほど遠い状態です。  今回の宣言は、多様性・公正性・包摂性を理念に、すべての構成員がダイバーシティを尊重し、すべての構成員のダイバーシティが尊重されるよう、意識啓発や環境・制度整備を促進することを表明するだけでなく、その本気度を国内外に示したと言えるでしょう。 本学学生への発信  本学男女共同参画推進センターは長年、全学科目「ジェンダーと人間社会」を主宰し、多様な分野における「ジェンダーと

【学生インタビュー】将来は「ぼんやり」でも大丈夫

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 今年度、本学教育学部に一般試験前期で入学した 岩渕駿平 ( いわぶち しゅんぺい ) さん(教・1)。「等身大の東北大生」として、話を聞いた。 将来は公務員になりたいと語る岩渕さん ―高校時代はどのように過ごしていたか   ヨット部の活動に打ち込んでいました。3年生のとき、試合中に風向きが味方したこともあって、インターハイに出場することができました。 ―受験勉強の工夫は   二次試験対策として、国語や英語の記述問題の解答を、高校の先生に添削してもらっていました。自分の答案の不十分なところを見つけてもらえたので、とても効果的だったと思います。 ―大学生活はどのように過ごしているか   宮城県内の実家から、長時間電車に乗って通学しているので、その間に課題をこなせるよう意識しています。課題がないときは、ぼーっとして過ごしています。 ―将来について考えていることは   公務員として、町づくりに貢献したいと考えています。少子高齢化により不活発になっている地域に、大人も子どもも楽しめるような学びの場を設け、教育という側面から地域を盛り上げたいです。 ―受験生にメッセージを   将来やりたいことが今はぼんやりしていても、大学での交流を通して決めていけると思います。とりあえず東北大を目指してみる、という選択でも大丈夫です。それから、受験勉強はコツコツ取り組んだ方がいいです。僕のインターハイじゃないですけど、受験期に何が起こるのかわからないので。

【秒撮】仙台朝市

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  「はいどうぞ、いらっしゃいませ!」    威勢のいい声が響く。「仙台の台所」こと仙台朝市は、今日も大にぎわいである。  仙台朝市は、仙台駅から徒歩5分、地元宮城の新鮮な野菜や魚介類を豊富に取りそろえた商店街だ。起源は1945年、空襲で焼け野原となった仙台駅前に立ち並んだ露店である。「青空市場」と呼ばれ、戦後の混乱の中、新しい時代へと歩き出す人々を支えたこの市場は、当時の雰囲気を残しながら現在まで続いている。2011 年の東日本大震災の際には、発生からわずか数日で多くの店舗が営業を再開し、早朝から大勢の人が列を作った。  いつの時代も市民を支え、市民に愛されてきた仙台朝市。店舗によって異なるが、月曜日から土曜日のおおよそ午前8時から午後6時まで営業している。少し寄り道をして、仙台での生活を体感してみてはどうだろうか。

浸水の防止へ 対策進む 仙台市の防災対策

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防災に市民の参加不可欠  仙台市は内水浸水の対策の一つとして、仙台駅周辺部に降る雨水を広瀬川へ放出する広瀬川第3雨水幹線の整備を進めている。幹線は直径2.6メートル、全長約4キロの排水管で、2026年3月に完成予定。完成後は 10 年に1度の確率で発生すると予想される豪雨でも対処が可能となる。 工事が進む広瀬川第3雨水幹線坑内の様子 =仙台市提供  市では1899年から下水道の整備を開始し、その一部を現在でも使用している。しかし都市化の進行に伴い、仙台駅周辺は既存の設備では排水能力が不足し、内水浸水が発生しやすい状況となっていた。内水浸水の対策について、市建設局下水道計画課の 伊藤孝優 ( いとうたかひろ ) さんは「幹線の整備は内水浸水への効果的な対策となる」と話す 。   ただ対策に絶対はないため、市民の積極的な協力が不可欠だ。市では下水道の整備に加えて「 浸水想定区域図 」を作成し、個人や地域単位で行える浸水対策を紹介している。行政による災害対策の効果を高めるために、市民には防災への参加が求められる。 【注】内水浸水   排水管の処理能力を超える豪雨となることで、処理しきれない雨水が地表に残留し発生する浸水被害。

全学教育 対面授業増加 今後も対面とオンライン併用

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 新型コロナの流行に伴い、本学では対面形式とオンライン形式を併用して授業を実施している。本学教務課への取材で、昨年度から今年度にかけて、対面授業が増加していることが明らかになった。今後も対面授業とともに、オンライン授業を活用する予定だという。  主に学部1、2年生が受ける全学教育科目のうち、全ての回を対面形式で実施した授業の割合は、昨年度前期は約23.3%だったのに対して、今年度前期は約51.3%に増加している。一方、全ての回をオンラインで実施した授業の割合は約41.4%から約2.9%に減少している。新型コロナの流行が収まりつつある現在、対面での授業が増加傾向にあるようだ。教務課によると、今後も各授業科目の内容に合わせて対面形式とオンライン形式を効果的に併用する予定だという。  本学では、授業や課題の連絡に、ISTU/DCシステムやGoogle Classroomを活用し、リアルタイム型授業を行うプラットホームとしては、Microsoft TeamsやGoogle Meet、 Zoomを利用している。本学では、これらのシステムやサービスをうまく利用できない学生を支援するため、学生向けの情報サイト、手引書、パソコン利用相談会、窓口での相談など、いくつかの対策が用意されている。  本学学生に、対面授業とオンライン授業のどちらが好ましいか尋ねた。福島小百合さん(文・1)は、「通学の手間が省け、資料が画面上ではっきり見えるオンライン授業が好ましい。ただ、回線トラブルがあると授業内容を聞き逃してしまうことがあり、その点はデメリットだと思う」と語る。  一方、 川上歩大 ( かわかみあゆと ) さん(理・1)は対面授業が好ましいと語る。「オンライン授業ではコミュニケーションが取りづらいが、対面授業では他の学生と同じ空間を共有でき、 集中しやすい」と話した。  対面授業、オンライン授業はともにメリット、デメリットがある。多様な形態を併用した、よりよい学習環境が期待される。

大学生のお金事情 アルバイトは? 節約は?

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 大学進学の前に検討しておくべき要素の一つに、生活費がある。東北大生協の調査によると、本学学部生の 82 %が一人暮らしや寮生活をしている。下宿生や寮生では月支出の半分を家賃が占め、自宅生ではアルバイトが収入の半分を超えた。本紙で先月、本学学部1、2年生を対象にアルバイトと節約に関する意識調査を行った結果、多くの学生が何らかのアルバイトと生活費の節制をして生活を送っていることが分かった。(小平柊一朗) 自宅外生の合計収支 自宅生の2倍   東北大生協の第57回(2021年)学生生活実態調査(以下、調査①)によると、本学では81.5%の学生が一人暮らしや寮生活をしており、残りの18.5%が実家からキャンパスに通う。自宅外生の居住形態は、アパート・マンションが 85%で最も多く、寮が8.5%、学生会館が5.3%。食事付きの物件や寮に住む人が約7%と続いた。  翌月への貯金・繰り越しを差し引いた月合計支出額の平均は、下宿生が10万9千円、寮生が7万7千円、自宅生が3万8千円(四捨五入、以下同)。住居費と食費の大きな差が、そのまま全体額の差として表れた。自宅外生では、住居費が支出の約半分を、食費が約4分の1を占めた。交通費は、自宅生のほうが2倍近く高い傾向にあった。  月合計収入は、下宿生が12万2千円、寮生が9万4千円、自宅生が5万9千円。下宿生では総収入の6割、寮生では5割弱が、実家からの仕送りだった。対して自宅生ではアルバイトの給料が5割を占めており、自宅外生よりやや高い金額だった。自宅外生は自宅生よりも、家事に多くの時間がかかることが、影響しているとみられる。 アルバイト 無理なく 倹約も  本紙が先月実施した調査(以下、調査②)では、学部1、2年生を対象に「アルバイトの就業状況」や「節約への意識」について聞き、それぞれ36人と34人から回答を得た。調査はTwitterやLINEなどを用いて行った。  「現在働いている」人にはその業種を、「これから働く予定のある」人には希望する業種を、それぞれ選択式で答えてもらった =図= 。最も多くの票を集めたのは、「塾講師・家庭教師など」。時給が高い傾向にあることや、受験の経験を生かせることが理由とみられる。塾のスタッフや試験監督などの人気も高い。  調査②では、アルバイトなどで働いている人と働く予定のある人に対し、週あたりの労

宗教学・心理学・経済学において 「自立」とは?

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 大学では日々文系から理系まで、さまざまな学問分野の研究が行われている。では、それらの学問はそれぞれ一体どのような研究をしているのか、どのような違いがあるのか。 心理学、宗教学、経済学の 3 つの学問分野の特徴を比較しながら、 「自立とは」というテーマに迫る。 文学研究科 宗教学専攻 阿部友紀 助教 (写真撮影時のみマスクを外しています。) 自分だけでなく周囲に認められること ― 宗教学とはどのような学問か    宗教学は様々な分野に分かれています。そのうち私の専門である宗教民俗学は、宗教や信仰がどのように信じられ、実践されてきたかを考察することで、日本文化、生活習慣、社会を理解することを目的とする学問です。 ー 自立とは  ここでは「自立すること」を「一人前になること」と定義しましょう。すると、宗教民族学における自立は、「社会で生き、貢献するための能力、責任、義務を備えているということを、所属する社会や共同体で認められること」だと言えます。  共同体で自立を認められるには「年齢」と「能力」という二つの条件を満たすことが必要になります。かつては一定の年齢に達した上で、共同体で求められる能力があることを、通過儀礼を経ることで証明していました。今ではレジャーとして親しまれているバンジージャンプも、バヌアツという国で行われていた成人儀礼を起源としています。一種の試練の試練ともいえる儀礼を通して自身の成長を示していたのです。  自立は自分だけが認めるのではなく、周囲に認められる必要があるものだと言えるでしょう。 文学研究科 心理学専攻分野  辻本昌弘教授 「自立」の定義を具体的に問い直す必要性 ― 心理学とはどのような学問か  心理学はさまざまなデータをもとに心の働きや行動を解明する学問です。実験、質問紙調査、インタビュー、フィールドワークなどを駆使し心と行動の関係を分析します。 ― 自立とは  心理学は実際のデータを分析し問題解決を図る学問です。「自立とは」という問いに答えるには、まず「自立」とは具体的に何を指すのか、いかなる事態を指すのか、明確にしなければなりません。「経済的自立」「精神的自立」などの言葉をよく耳にします。一口に自立といっても、さまざまなものがありそうです。それらが具体的にどういうことなのか。理解したつもりになっている概念を厳密に捉え直し、具体的な次元に

入試方式 学生にアンケート AO入試選択肢の一つに

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  本学には一般入試に加え、AO入試や国際バカロレア入試、グローバル入試、国際学士コース入試などの多様な形態の入試制度が存在する。一般入試は前期のみ実施する学部がほとんど。理学部と経済学部でのみ、前期入試に加えて後期入試が実施される。  AO入試とは書類審査と面接などを組み合わせることにより、能力、適性や学習に対する意欲、目的意識などを総合的に判定する入試制度。本学はAO入試に力を入れており、 2021 年度にはAO入試での入学者が全体の3割を超えた。本学のAO入試にはAOⅡ期およびAOⅢ期と二つの入試方式が存在する。  AOⅡ期では 10 月頃に出願し、 11 月中に試験を受験、 12 月中旬には合否が発表される流れとなる。試験では書類、面接、筆記の3つの審査をもって合格を決める。本学では「優れた学力」を重視するため、筆記試験の配点が高くなっている。これらは指定校推薦や他の大学のAO入試と同時期の試験となる。  AOⅢ期では大学入学共通テスト後の出願、共通テストの点数による選抜、試験の実施、そして2月中の合格発表となる。この制度は共通テストの配点が高く、どの学部でも7割程度またはそれ以上の配点を占める。  その他の国際バカロレア入試やグローバル入試、国際学士コース入試等は特別選抜入学試験に分類される。この制度ではほとんどの学部、学科、制度で募集人数が若干人とされている。  本紙では本学学生を対象としたアンケート調査およびAO入試入学者2人に対する取材を行った。本アンケートは6月上旬にインターネットを通して行ったもので学生 42 人から回答を得た。  アンケート調査によると、特別選抜入学試験を知っている割合は低く、全体の半分に満たなかった。一方で、一般入試やAO入試はその割合が9割を超えており、AO入試の知名度の高さがうかがえる。AO入試を受けた理由については、「受験回数を増やすため」「周りの大人に勧められた」、「早く合格したかった」の三つに多くの票が集まった。AO入試を受ける場合、同時に一般試験の対策をすることも多い。  実際にAOⅡ期を受けた医学部1年生は「志願理由が決まっていた上、過去問は筆記試験3年分しかない。そのため、AO入試のための準備によって一般受験の勉強が妨げられることは特になかったように思う」と話す。AOⅢ期を受けた農学部1年生は「出願した後はAO

「小説家」以前の漱石 思索の跡たどる

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  大学の図書館ってどんな場所だろう?そんな疑問を持つ高校生は多いのではないだろうか。今回は、本学附属図書館が所蔵する貴重なコレクション「漱石文庫」を取り上げ、大学図書館の一端を紹介する。同館情報サービス課貴重書係の菊地良直さんに話を聞いた。  漱石文庫は、明治時代を代表する文豪・夏目漱石の約3,000冊の蔵書やその他のメモ類からなる漱石の関連資料群だ。漱石の愛弟子であった小宮豊隆が、漱石の死後に本学の図書館長を務めていた縁で、1944年に同館に受蔵された経緯を持つ。  特徴は「蔵書の約3割に書き込みがあり、それが研究に直結している」(菊地さん)こと。「漱石自身が文学をどう捉えていたのか、小説を書くときにどういったことを考えていたのか。そういった漱石研究の基礎となる資料の原本を所蔵しています」  取材では漱石が自身の文学研究のプランを書いた『大要』と呼ばれるメモと、『シェイクスピア全集』にある書き込み部分のレプリカを見せてもらった。洋書の多くは漱石が英語教師として働いていた頃に集めたもので、数々の書き込みからは、小説家になる前の漱石の思索の過程をうかがうことができる。  同館では漱石文庫をデジタル化し、「東北大学デジタルコレクション」内にて公開している。同館ホームページから誰でも閲覧することができる。原本は貴重図書のため一般閲覧は不可となっている。   『大要』。漱石の文学研究のプランを記したもので、「(1)世界ヲ如何ニ観ルベキ(2)人生ト世界トノ関係如何…」などと16項目続く。「漱石自身の文学研究の出発点。ここから実際に自分で小説を書くということに発展していきます。」(菊地さん)。 『シェイクスピア全集』の書き込み部分。『ハムレット』について、「幽霊ノ話ヲ出ス処少々マズシ。余ナラバ…」と批評している。

全学教育 多様な意義

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 本学では、2022年以降、全学教育(教養教育)が大学4年間を通して提供されることになった。高度教養教育・学生支援機構の副機構長を務める中村教博教授と、課外・ボランティア活動支援センターの松原久特任助教に話を聞いた。(照井希望) 高度教養教育・学生支援機構副機構長 中村教博 教授 =本人提供 ―全学教育の意義は  中村  高校までの学習は、文部科学省が定めた範囲の知識を教科ごとに学び、答えが一つである問いを扱います。大学では専門的な知識を学び、その上で新しい「知」を創造することが使命です。学んだ知識を組み合わせて、自分自身の切り口で新しい知識を創造していく必要があります。  その際、異分野との協働がきっかけになることが多くなっています。専門的な知識を学ぶことは、学部の専門教育が担いますが、異分野との協働は、学部内ではなかなか経験できません。しかし、社会人になると、必ず異なる専門分野の人と協働する機会に出会います。  したがって、全学教育の意義は、2点あります。第一に、幅広い知識や素養、外国語や情報に関する基盤的な能力を育成すること。第二に、異なる専門分野、異なる文化、異なる世代の人をつなぎ、協働する機会を提供して、多角的な視野を身につけてもらうことにあります。 課外・ボランティア活動支援センター 松原久 特任教授   松原  私は全学教育において、①地域での社会貢献活動をとおして学ぶ授業(サービス・ラーニング)、②東日本大震災と私たちの社会の関わりについて講演・フィールドワークなどから学ぶ授業に関わってきました。そこで、それぞれの視点から意義をお話しします。  前者の意義は3点あります。第一に、学外に踏み出して自分が住む地域について知ること。第二に、専門領域を学ぶ前段階で、様々な領域の人々と関わりを持つこと。第三に、自分の専門分野と、住民が抱える課題の関連性について考えること。例えば、津波のシミュレーションは、津波常襲地の住民にどう役立つのか考えることなどです。  後者の意義は3点あります。第一に、東北地方の出身ではない学生が、東日本大震災について触れること。第二に、自分と東日本大震災との関わりや、自分にできることについて気づくこと。第三に、日常生活で接点が少ないマイノリティの課題について考えること。震災について考えることは、高齢者や外国人などが抱える課題に向き

志高い学生 全国から入学 割合から見る東北大の特徴

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割合から見る東北大の特徴  本学には2021年5月1日現在で学部生、院生あわせて、17,665人が本学に在籍している(本学HP)が、全国から学生が集まる点や研究型総合大学であることから、さまざまな特徴が見られる。その多様な特徴を、割合という視点で眺めてみる。  学部生の男女比と文理の比率から紹介する。 21 年5月1日現在で学部生10,695人のうち、男子は7,876人( 73. 6%)、女子は2,819人( 26. 4%)、文系学部の在籍者数は3,106人( 29. 0%)、理系学部の在籍者数は7,589人( 71. 0%)である(本学HP)。  文理の人数比では、理系学部に在籍する学生が7割以上を占める。その中でも女子は、在籍者7589人中1,745人で 23. 0%。学部生の総数においても、女子が占める割合は3割に満たなかった。しかし文系学部の在籍者3,106人中、女子は1,074人で 34. 6%と、3割を超えた。   22 年度入学者の受験方法ごとの割合に着目する。対象とする受験方法は、AO入試Ⅱ期、Ⅲ期、一般入試の三つ。 22 年度入学者2,412人(特別選抜枠を除く)中、AO入試Ⅱ期の合格者は269人( 11. 2%)、Ⅲ期は362人( 15. 0%)、一般入試の合格者は1,781人( 73. 8%)(本学入試センターHP)。  AO入試の合格者が占める割合は 26. 2%。旧帝国大学で、AO入試がある4大学(東京大、京都大、北海道大、大阪大)の入学者内でAO入試合格者が占める割合は、2.9%~8.3%。これら4大学と比べると、本学ではAO入試に合格して入学した学生の人数が多いことが分かる。  入学者の出身地方の内訳も見ていく。 21 年4月1日現在で、学部入学者総数2,420人の内に占める割合が最も大きいのは関東地方で900人( 37. 2%)。続いて東北地方(宮城除く)486人( 20. 1%)、中部・北陸地方387人( 16. 0%)、宮城県367人( 15. 2%)である(本学HP)。 知名度や研究成果魅力に 独自アンケートから  本紙では、本学学生を対象に「学生のさまざまな割合に関するアンケート調査」をSNS公式アカウントやLINEを用いて実施し、 45 名から回答を得た。「本学の魅力」と「本学を志望した理由」に関する回答、割合を紹介

突撃 東北大生のカバンの中身チェック!

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【東北大生のカバンの中身チェック!】 写真①  1人目は男子学生のH・Tさん(法・1)。入っていたのは、パソコン、英語とスペイン語の教科書、マキャヴェリの『君主論』、『ポケット六法』、スケジュール帳、ペンケースだ=写真①=。一押しアイテムは『ポケット六法』。法学部の専門授業や、自習のために持ち歩いているという。『君主論』は、西洋政治思想史の授業で読んでいるそうだ。法学部生らしい持ち物だった。 写真②  2人目は女子学生の T ・ H さん(文・2)。入っていたのは、パソコン、 i P a d 、 A i r P o d s 、充電器、ペンケース、ボディミストだ=写真②=。一押しアイテムはボディミスト。香水より自然な香りが好きで、重宝しているそうだ。 i P a d では、ノートを取ったり、授業スライドの電子版ファイルにタッチペンで書き込んだりしている。ノートがかさばらないところが魅力だ。 写真③  3人目は男子学生の M ・ K さん(工・1)。入っていたのは、パソコン、教科書3冊、方眼紙、弁当箱だ=写真③=。方眼紙は、「自然科学総合実験」(本学の理科系学部1年生が対象の授業)で、グラフの作成に使用する。一押しアイテムは弁当箱。食費を節約するため、自分で作って毎日学校に持参しているという。昼食は学食を利用する学生が多いが、弁当を作って持参している学生も一定数いる。 写真④  4人目は女子学生の A ・ F さん(農・2)。入っていたのは、教科書、ノート2冊、スケジュール帳、ポーチ、ペンケースだ=写真④=。授業の板書ノートと、部活でメモを取るノートに分けて使っている。一押しアイテムは部活用のノート(写真の左から4番目)。同じ部活の先輩からもらったもので、大切に使っているという。大学生になるとパソコンで作業することが多くなるが、書くことへのこだわりが感じられた。